熟成大古酒「時の職人」~酒と友は古いほど良い(Vintage Sakeの世界)~

随分前に日本酒が好きな友達に教えてもらった印象的な話があります。

日本酒を好きになった人が、向かう先として二つの終着地点があるらしい。

一つは、お酒を温めて楽しむ燗酒。そしてもう一つが、お酒を寝かせて楽しむ熟成酒

日本酒を好きになればなるほど、避けがたく沼にハマってしまう二つの日本酒の楽しみ方、燗酒と熟成酒。

私たち狩場一酒造では、2008年に熟成酒の製造を行い、大蔵の一番温度変化の少ないタンクで貯蔵をしておりました。

そして、2024年1月より秀月 長期熟成酒「時の職人」として販売を開始しました。

 

長期熟成酒を制作するに至った経緯や味わい、おすすめの飲み方についてまとめたいと思います。

長期熟成酒とは

日本酒における長期熟成酒とは、何か簡単にまとめます。
日本酒と同じ醸造酒であるワインは、飲み頃になるまで保存することでビンテージという概念が加わり、お酒の価値が高くなっていきます。その一方で、日本酒は年月をかけて熟成をさせることよりも、新酒の生酒に象徴されるように、しぼりたてを新鮮なうちに飲むことが良いと考える傾向があります。そうしたお酒ももちろんおいしいですが、時間を掛けて熟成させた日本酒は、新酒にはない全く別の表情があります。
 
この記事では、着実にファンが増えている、日本酒の熟成酒の世界を覗いてみて下さい!

熟成酒の定義

はじめに、日本酒における熟成酒についての法律的な定義や規定はございません。

そうした中で、長期熟成酒に取り組む酒造会社で設立された「長期熟成酒研究会」では、「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」「熟成古酒」と定義しています。

この定義は、日本酒飲むうえで3年という期間が、新酒でもなくなおかつ、秋あがりひやおろしとも味わいの異なる性質を持つ期間であると考えたために設定された期間になります。

また、日本酒業界では熟成酒とは別に「古酒(こしゅ)」という言葉があります。古酒とは、酒造年度(7月1日~翌年の6月30日を1年間と区切る)を基準にして、前の年より以前に造られたお酒の事を指します。

なお、現在日本酒のラベルの表示内容において、熟成期間や何年に仕込みを行ったなどの記載の義務はありません。熟成の表記はそれぞれの酒造会社によって記載内容は異なります。

もっと深く知りたい方は、下に記載の長期熟成酒研究会のHPがおすすめです。

http://www.vintagesake.gr.jp/aboutvintagesake

熟成酒の見分けるポイント

熟成酒をこれから飲まれる方には、熟成酒の味の傾向を見分けていくポイントを整理したいと思います。

 

1.お酒の種類

熟成酒においても、特定名称酒と呼ばれるお酒の種類によって味わいの傾向を分けることができます。

①大吟醸・吟醸酒系

大吟醸や吟醸酒といった精米歩合が高く華やかな香りが特徴のお酒は、熟成させることにより、吟醸香を残しつつもほどよく苦味が加わり、味に奥行きと幅を感じる熟成酒になります。こちらは、熟成度合いによりますが、比較的飲みやすい熟成酒が多い傾向です。

※現在は、大吟醸や吟醸酒などのアルコール添加したお酒が手に入りやすく、純米大吟醸や純米吟醸の熟成酒は希少です。

 

②純米酒・本醸造・普通酒系

純米酒、本醸造系のお酒はしっかりと時間を掛けて貯蔵することで、濃醇で複雑な味わいになります。また、色合いも琥珀色から黒みを帯びた褐色へと変化していき、照りが出てくるのも特徴です。

特に、無濾過のお酒や酸度の高いお酒は個性的な変化しており、①の大吟醸や吟醸酒といった種類ではなかなかカテゴリ―できない複雑な味わいが楽しめます。

 

2.熟成の方法

意外と見落としがちなのが熟成の方法です。熟成酒をいくつか飲み比べた方は、貯蔵の方法によって味わいが異なることに気づかれるはずです。この貯蔵の方法によって、熟成のスピードが大きく変わるため、もしラベル等に記載があれば、確認したいポイントです。

①低温熟成

この場合の低温熟成は15度以下での管理になります。ゆっくりと熟成がすすむため、常温熟成に比べて同じ期間の熟成でも若く感じることが多くあります。特に①の吟醸酒系のお酒の熟成に向いています。

②常温熟成

常温貯蔵は、基本的に空調設備の無い場所で熟成を行い年間を通して適度な温度変化が加わり、②の純米酒・本醸造系の熟成に向いています。低温熟成に比べてはるかに早く熟成をします。低温熟成や、氷温熟成などの記載のない場合は、ほとんどが常温熟成と考えて良いと思います。

 

3.熟成の期間

熟成酒においてまず指標となるのが、熟成・貯蔵している期間です。

期間は熟成や貯蔵をしている期間を記載している場合と、製造・醸造した年月を記載している場合があります。

熟成で得られるソトロンと呼ばれる成分の生成と、熟成の過程で失われていく酢酸イソアミルの影響で飲みごろの期間の目安を定めることができます。

少し大雑把な説明になりますが、①の吟醸系は酢酸イソアミルが失われる前の期間で、低温熟成で3年~30年、常温熟成だと10年以内が飲み頃の期間となります。

②のお酒の場合は、ソトロンがしっかりと生成されている期間、低温熟成で10年以上、常温熟成で11年~20年程が飲み頃の期間となります。

秀月 長期熟成酒「時の職人」

ここからは、私たちの熟成酒「時の職人」について説明いたします。

熟成酒に取り組むまで

蔵元の狩場一龍は、日本酒が他のお酒と比べた時、大きな特徴として日本酒の持つ多様性に魅力を感じました。その多様性を自分の蔵でも表現したいと思い、生酒や特定名称酒の商品化を行ってきましたが、その中でさらに幅ひろい味を求めて熟成酒の制作を決断しました。

長期熟成酒を造る上で鍵となるものを、酸度とアルコール度数と考え、どちらも通常のお酒より高めのものを製造して貯蔵を行いました。

理由としては、やや酸度を高めにすることによって、熟成による味の変化が多くなるとされ、また、アルコール度数を高くすることで貯蔵期間の品質の劣化を少しでも防ぐことができると考えたためです。

貯蔵期間「15年」

実際2008年当時に、熟成酒に取り組んだものの初めての製品で、どのくらいの期間の貯蔵で商品化が出来るか未知のままでした。蔵元の狩場は、当時を振り返ると貯蔵しておよそ10年までは、なかなか思うような味わいに近づいておらず、商品化がいつできるのかと焦る思いもあったと言います。

それでも、10年を超えて以降は熟成によって生成されるソトロンと呼ばれる芳香成分を感じるようになり、味わいも豊かなものに変化していきました。

この変化を感じていく中で、狩場は、「時(とき)」という職人がお酒の味をととのえ仕上げていく作業を行っていると感じました。そのため、商品には「時の職人」という他のお酒では感じられない味わい作り出す、蔵人とは異なる職人の名前を加えることにしました。

 

先の見分ける3つのポイントを私たちの熟成酒に当てはめると、下に記載のようになります。

秀月 熟成大古酒「時の職人」
1.お酒の種類→普通酒
2.熟成の方法→常温熟成
3.熟成の期間→2008年、15年熟成(2024年5月時点)

「時の職人」の飲み方

熟成酒「時の職人」は、さまざまな飲み方で楽しんでいただけます。
ぜひ、自由な発想で、自分なりの好きな飲み方を探してみて下さい。

定番の飲み方

まずは、熟成酒本来の味をしっかりと楽しみたい方は、どのお酒にも共通して言えることかもしれませんが、ひや(常温)で飲んで頂きたいです。

初めに香りを感じて、次に口に含んだ時の印象は、いままで飲んできた秀月とは別物だと思われるはずです。そして、口の中に残る長い余韻は、甘味と酸味と苦味の絶妙なバランスで、時間が生み出す複雑な味わいを象徴します。

合わせる料理は、豚の角煮やジビエ料理などがおすすめです。特に豚肉の脂質やジビエ肉の赤身との相性がよく、しっかりと味付けをされた料理にも決して負けないお酒です。

 

ひや(常温)よりさらに味わいを楽しみたい方は、ぬる燗(45度前後)に挑戦して頂きたいです。ひやでは奥に隠れていた風味が表に出てきて、15年より先の味わいを想像できるはずです。この時は、食後酒として楽しむのも良いですし、ドライフルーツなどの甘いものを横に置いて、ゆっくりと飲むのがおすすめです。

アレンジした飲み方

熟成酒の試飲をして頂いたお客様によく言われるのが、「洋酒みたい!」という一言です。その洋酒の範囲も人それぞれで、ブランデー・ウイスキー・紹興酒・シェリー酒などさまざまなお酒に例えられます。

 

そうした特性を感じる「時の職人」だからこそ、自由にアレンジを楽しむことができます。

①フルーツを加えてサングリア風

生のフルーツをスライスしてお酒の中に入れて、少し時間を置きます。すると、お酒にはフルーツの香りと甘味が加わり、フルーツには熟成酒の旨味やアルコール分が含まれて、相乗的においしさがアップします。特にイチゴやパイナップル、梨などがおすすめです。

 

②ハードリカーと炭酸を加えてカクテルに

熟成酒はそのしっかりとした味わいから、カクテルにアレンジをしても美味しいお酒です。特にラムとの相性が良く、南国のトロピカルなカクテルを作ることができます。

■時の職人+ラムトニック

・熟成大古酒「時の職人」:45ml

・ホワイトラム:15ml

・パインリキュール:15ml

・トニックウォーター:180ml

他にもモヒート風にアレンジするのもおすすめです。

最後に

ここまで秀月 熟成大古酒「時の職人」と長期熟成酒について説明をしてきました。
日本酒が他のお酒と比べて大きく違う点は、その味の多様性にあると思います。新酒のフレッシュで、ピチピチとしたお酒から、何年も蔵の中で時を重ねた深く心にしみゆくお酒まで、本当に幅の広い味わいを持ったお酒です。
今、日本酒を楽しんでいる方も、これから日本酒を飲まれる方にも、一番伝えたいことは、「あなたに合う日本酒は絶対に存在する」ということです。それほど日本酒には多様性があり、懐の深い飲み物です。 
今の日本酒やお酒に飽きている方、楽しみは見いだせない方は、ぜひ、秀月の熟成大古酒「時の職人」をお試しください。

「時の職人」説明動画

時の職人をPRする動画を作成しています。蔵元自ら、この商品にかける思いを語っていますので、ぜひご覧ください。

熟成大古酒「時の職人」 YouTube動画

熟成大古酒「時の職人」の購入ページ

ここまでの説明で熟成酒が気になった方は、ぜひ「時の職人」を飲んで熟成酒の世界に飛び込んできてください。

今までに体感したことの無い、お酒の味わいを経験できると思います。

たしか中国の諺だったと思います。
「友と酒は古いほど良い」

「時の職人」を飲むと、この諺が頭をよぎります。
日本酒好きが向かう二つの終着点を教えてくれた友達に会いたくなる近頃です。

熟成大古酒 「時の職人」 商品ページ