これで納得、日本酒とみりんの違い ~原料・作り方・みりんの種類・調理の効果まで詳しく解説~

料理する際に、普段何気なく使っている日本酒やみりん。
皆さんその2つの違いって説明できますか?

結論になりますが、原料、作り方、そして料理の時の使い方、どれも少しずつ違いがあります。
このブログでは、意外と知らなかった日本酒とみりんの違いを、そしてみりんの原料・作り方・そして使い方と分けて学んでいきたいと思います。

少し長くなりますが、全部読むとみりんについてスッキリと整理される内容になっています。
どうぞ最後までお付き合いください。

意外と知らないみりん

原料について

みりんと日本酒の違いとして、まず原料について説明します。
日本酒は、米・米麹、さらに種類によっては醸造アルコールを使用します。
この時の米は多く場合、酒造好適米と言われるお酒造りのために品種改良をされたお米を使うことがほとんどです。

因みにですが、私たち狩場一酒造では、掛け米といって醪造りに使用するお米は、「日本晴」という飯米を使用しています。
これは、敢えて飯米を使うことで、しっかりと旨味のあるお酒を目指しているためです。

話を戻してみりんの原料についてです。

みりんの原料は、もち米・米麹・焼酎または醸造アルコールが原料になります。
もち米を使用する理由はすごくシンプルに言うと、みりん特有の甘さを出すためです。

少し詳しく説明すると、もち米と日本酒で使用するお米ではデンプンの種類に違いがあります。日本酒で使用するお米はうるち米には、アミロペクチンとアミロースという2種類のデンプンでできておりますが、もち米はアミロペクチンのみで構成されたお米です。
アミロースを含まないとなぜ甘くなるかを説明するには長くなってしまいますが、ざっくりと要約するとアミロースとアミロペクチンの分子の構造の違いによって甘さの違いが出ています。

作り方について

みりんと日本酒の作り方の大きな違いとして、みりんの製造過程には日本酒が出来上がるまでに行われる、アルコール発酵の過程がないことが挙げられます。

具体的には、みりんは蒸したもち米と、麹米、焼酎を一つのタンクに入れて同時に仕込むため、日本酒のような酵母によるアルコール発酵をせずに糖化のみをさせて造ります。また、みりんのこの糖化は日本酒の仕込みの期間に比べて2~3倍ほど長いのが特徴です。40日~60日程かけて行うのが一般的ですが、長いものでは、1年さらには10年以上と長期熟成したものもあります。
こうしてゆっくりと米麹の酵素の働きで、糖類やアミノ酸の生成するのを待ちます。
ここまで説明をしてきましたみりんについては、みりんの中でも「本みりん」と呼ばれるものになります。

みりんの種類について

スーパーに行くと思わず悩んでしまう、みりんの種類についてです。
みりんには大きく3種類があります。
「本みりん」「みりん風調味料」「みりんタイプ調味料」のそれぞれの原料と特徴は下の表のようになります。

本みりん

本みりんは、先に説明した通りもち米を使い、焼酎や醸造アルコールを加えた後、糖化のために熟成させます。
熟際の過程では、もち米のデンプンが糖に変化し、タンパク質がアミノ酸に分解されていきます。こうした変化によって、他のみりん風調味料やみりんタイプ調味料と比べて、まろやかでコクのある甘味や旨味が出るとされます。

また、本みりんはアルコール度数が14度前後あるため、法律上は酒類に分類され、酒販免許のあるお店でしか扱えないようになっております。

みりん風調味料

みりん風調味料は、水あめやブドウ糖などで甘味を加え、酸味料や香料によって旨味を出すことで、本みりんに似せるように作られた調味料になります。
他の2つの調味料との大きな違いは、アルコール分が1%未満と極めて少ない点と、水あめなどを使用しているため、甘味が強いことが特徴です。
このような特徴のため、アルコールの揮発性によって素材の臭みを消す効果は低いので、料理の際は注意が必要です。一方で料理に甘味や照りを出したいときには、効果が絶大です。

アルコール度数が1%未満という事もあり、酒税の対象にならないため酒販免許のないお店でも販売ができます。また、本みりんに比べ醸造期間が短い点、さらに酒税が掛からないため、安く販売でき私たちにとって良い点もあります。

みりんタイプ調味料

みりんタイプ調味料は、本みりんのように作られたものに、塩を加えてそのままでは飲めないようにした調味料になります。
飲用出来ないように塩を加えることで、アルコール度数は14度前後あっても酒税の対象にならず、一般の調味料として販売ができるものになります。

ここで押さえておきたいポイントは、調味料自体に塩味があるため、しょうゆや塩を控えめに味をつける必要があります。裏を返せば、これ1本で塩味付く便利な調味料です。

料理の時の使い方

みりんを調味料として使うのは6つの目的があるとされます。

1.上品な甘味を付け加える
2.照り・つやを出す
3.コク・旨味を出す
4.臭みを消す
5. 味を染み込みやすくする
6.煮崩れを防ぐ
   
この6つの内、1から3については本みりん、みりん風調味料、みりんタイプ調味料の全てで効果を得られます。
一方で、4から6については、アルコール分が食材に作用して得られる効果のため、アルコール分が少ないみりん風調味料では、このような効果は期待できません。

1.上品な甘味を付け加える

みりんは砂糖とは違い、上品な甘さを付け加えることが出来ます。
それは、みりんの甘さがブドウ糖・オリゴ糖などの複数の種類の糖の甘さに由来しているためです。
ここで気を付けたいのが、みりんの甘さは砂糖のような直接的な甘さを料理に加えられないという事です。そのため、甘さを足したくて多く入れ過ぎないように注意しましょう。

2.照り・つやを出す

このみりん特有の照り・つやは、みりんが複数の種類の糖を含む出るとされます。
特に照り・つやを出すのに効果の高い調味料は、甘味の強いみりん風調味料になります。
照り・つやをしっかり出したいときは、調理の最後に入れと特に効果的です。

3.コク・旨味を出す

みりんは甘味だけでなく、料理にコクや旨味を引き出します。
これはみりんに含まれる、お米由来のアミノ酸や有機酸によるものです。
特に本みりんは、コク・旨味を引き出す効果があるとされ、食材の持つそのままのおいしさを引き立てる役目があります。

4.臭みを消す

みりんに含まれるアルコール分の蒸発により、食材(特に肉や魚)の臭みを取り除く効果があります。また、みりんの持つ糖類やアミノ酸を加熱すること得られる成分によって、食材の臭みの元を覆い隠す効果もあるとされます。
臭みを消す効果を最大限に活用するためには、料理の最初に加えて食材を一緒に火にかけるのが良いとされます。

5. 味を染み込みやすくする

このような効果もアルコールの作用によるものです。
アルコールが食材にしみ込む際に、他の調味料や旨味も一緒にしみ込むためこのような効果が得られます。
こちらも料理をする始めにみりんを加えることで、効果が最大限に発揮されます。

6.煮崩れを防ぐ

これは、みりんのアルコールと糖によって得られる効果です。
アルコールと糖が食材にしみ込むことで、食材のデンプンの流失を防いぎ、また肉や魚の筋繊維の崩壊を防ぐため、煮崩れがしにくくなるとされます。
こちらも4.5.同様に料理の始めにみりんを加えることで、効果が最大限に発揮されます。

~みりんを使う注意点~

本みりんやみりんタイプ調味料には、アルコール分が14%前後ふくまれています。
そのため、加熱しない料理(おひたし、白和えなど)に使用する時は、あらかじめ加熱をしてアルコール分を飛ばして使用する必要があります。
これは「煮切りみりん」といい、昔から和食には欠かせない調味料とされます。

まとめ

今回は、越境的になりましたが 酒蔵である私たちが 、みりんについてまとめてみました。
料理をする時の楽しみの一つに、調味料をうまく使い理想の味にすることがあると思います。
私自身、今回学んだみりんの知識を使い、普段の料理がワンランク上がることを期待しています。