日本酒の賞味期限について  ~意外に知られていない日本酒の賞味期限と保管方法~

お店に立っているとよくお客様から聞かれる質問があります。

「日本酒の賞味期限はどのくらい??」

この質問、答えはとても簡単でありながら、突き詰めていくと日本酒の楽しみ方の幅がまた一つ広がる、とても良い質問だと思います。

今回は、日本酒の賞味期限を切り口に、日本酒にとって品質を変化させる要因、保管方法とお酒の種類によって異なる飲み頃期間など学んでいきたいと思います。

第1章 日本酒には賞味期限がない

今回のテーマ「日本酒に賞味期限ってあるの??」の答えはズバリ、
日本酒に賞味期限はありません❢

なぜ日本酒に賞味期限がないかというと、賞味期限の表示義務がないためです。
なぜ表示義務がないかというと、お酒に含まれるアルコールによる殺菌作用により、未開封の場合はまずお酒が腐らないため、食品表示法により賞味期限の省略が許されています。

日本酒には賞味期限がないですが、私たち製造・販売する者にとっては、お酒によって飲んで頂きたい期間 飲み頃はお酒の種類によって異なるため、詳しくは3章目で説明を致します。

先に触れたように、日本酒には賞味期限の表示義務がない一方で、製造年月の表示をする場合がほとんどです。
この製造年月は、もともとは瓶詰めをした日を表記するものだったのですが、特定名称の清酒で一定の要件を満たせば、製品化した時期を製造年月として表示することができます。
※この件は、なかなか難しいので別の機会に、詳細を書きたいと思います。

第2章 日本酒の酒質を劣化させる3つの要因

ここでは、日本酒の酒質を劣化させる3大要因について説明します。
日本酒を正しく保管・管理するためにも、今から上げる3つの要因を理解し、おいしくお酒を楽しむ方法を学んで頂ければと思います。

2ー1,日本酒を劣化させる要因 「光」

お酒を保管する上で、最も気をつけたいのが光、特に紫外線です。

日本酒は紫外線に弱く、お酒の中に含まれる成分のアミノ酸や糖類などが、紫外線によって反応し酒質の劣化に繋がります。

具体的には、紫外線を受けることで、見た目には黄色や茶色っぽく着色をしたり、味わいでは不快な苦味が出てきます。

また香りついても、微量なビタミンや有機酸などの成分が分解などの変化をして、「瓶香」と呼ばれる特殊な劣化臭が発生するとされます。

2ー2,日本酒を劣化させる要因 「熱」

日本酒は、ビールや焼酎などの他のお酒に比べて、熱(温度)によって酒質を大きく変化させる飲み物です。

30度近い高温で数日間保管すると、「老ね香」と呼ばれる不快な香りが発生し、購入当時の酒質とは全く別のお酒になってしまいます。

合わせて気を付けたいのが、保管の際の温度だけでなく、急激な温度変化も日本酒にとってはダメージになります。お家で1升瓶などの容量の大きい瓶で楽しむ際は、小瓶に分けて少しずつわけて飲んでいくなどの工夫をされるのも良いでしょう。

狩場一酒造では、生酒は冷蔵庫での保管、火入れしたお酒は冷暗所での保管をおすすめしております。

具体的な温度としては、生酒は5度~10度程度の場所で、火入れしたお酒は、20度を超えない場所での保管を推奨します。

 

2ー3,日本酒を劣化させる要因 「酸素」

最後に、保管の際は参加にも気を付ける必要があります。
日本酒は、空気に触れて酸化することで、木香様臭の元となるアルデヒドの生成がされるとされます。

また色合いにおいても、褐色に近づくような変化し、購入当初のお酒とは違うものになってしまいます。

こうした酸化を防ぐには、お酒と空気が触れる面や時間を小さくかつ短くすることが有効です。

具体的には、開栓後は出来る限り早く飲むことや、瓶を縦向きで保管することで、酸化による影響を最小限にとどめることができます。

第3章 お酒の種類によって異なる飲み頃

日本酒は種類によって飲み頃の期間がことなるお酒です。
また、各蔵によっても微妙におすすめの飲み頃の期間が異なっており、その点が消費者の方には、難しくもあり面白くもあるポイントになります。

早めに飲むのがおすすめ生酒

生酒は名前の通り、火入れという加熱処理を一切行っていないお酒になります。そのため、生酒の中には、各種酵素が活性状態で残っており、保管中に成分の変化が起こりやすい特徴があります。

その一方で、生酒の魅力は何といっても、火入れしたお酒に比べて新酒特有の新鮮な風味が味わえるのが特徴です。

冷蔵技術の向上や冷蔵での流通が普及がした今日では、狩場一酒造でも年々生酒の比率が高くなりつつあります。

生酒を楽しむための注意点は、とてもシンプルに購入後なるべく早く飲むことです。

先程、挙げた酒質を劣化させる3つ要因は、特に生酒には強く働きます。そのため、購入後は冷蔵庫で保管し、開栓後はなるべく早く飲みきることをおすすめします。

狩場一酒造の目安として、生酒は製造年月から4ヶ月、開栓後は2週間程度で飲んで頂くのがおすすめです。

秀月のお酒では、純米大吟醸‐生酒、氷室シリーズ、純米酒生、生原酒、朝一番しぼり、にごり酒などが生酒として販売しております。

ちなみに、読み方は「なまざけ」「なましゅ」と読みますが、これを「きざけ」と読むと意味合いが少し異なります。
「きざけ」と呼んだ場合は、「生一本」※きいっぽんと同義語になるので、注意が必要です。

ゆっくり楽しむ火入れ酒

生酒に対して、火入れしたお酒についてです。

基本的に、日本酒は製造過程のなかで、貯蔵前と瓶詰め前に約60~65度で加熱殺菌をする「火入れ」という作業を行うのが一般的です。これは、貯蔵中に日本酒にとっての大敵「火落ち菌」を殺菌することと、品質を劣化させる恐れのある酵素の作用をとめる2つの目的により行われます。

この工程を経ることで、酒質を劣化させる要因を取り除き、生酒よりも気軽に管理ができます。

火入れしたお酒の飲み頃期間の目安として、狩場一酒造では、製造年月から6ヶ月以内をおすすめしております。また、開栓後につきましては、原則出来る限りお早めに飲んで頂く事が基本になります。

補足になりますが、火入れしたお酒では扱いに慣れてくると、開栓後少しずつ味が変化していく様子を楽しむことができます。自家熟成までいかなくても、時間をおいてゆっくりと飲むことで、購入されたお酒の意外な一面が見えることがあるのでおすすめです。

ただし、いくら火入れの処理をしているからと言っても、20度を超える環境ではとても速い変化が起き、飲みづらいお酒へとなってしまいます。くれぐれも冷暗所での保管をして頂くようお願いいたします。

第4章 秀月の飲み頃の期間と保管方法 

すでに前章で触れてしまいましたが、飲み頃の期間と保管の方法をおさらいします。

飲み頃期間と保管方法のまとめ

ここでは、もう一度保管方法をまとめておきたいと思います。

狩場一酒造の推奨は、上の表のようになります。

表はあくまで、原則的な内容になります。
例えば臨機応変に、冬の寒い時期は生酒でも冷蔵庫ではなく、日の当たらない寒い場所で保管を頂くことはできますし、逆に火入れしたお酒を冷蔵庫で保管し、冷酒で少しずつ飲むのも問題ございません。

基本に戻って、日本酒を劣化させる3つの要素「光」「熱」「酸素」によるダメージを少なくする方法を、自分なりに見つけるのが良いかと思います。

まとめ

今回は、日本酒の賞味期限を切り口に、日本酒を劣化させる要素や保管方法、飲み頃の期間について考えてきました。このブログで記載した内容は、狩場一酒造としての見解をまとめたものです。

日本酒を保管する上で大切なことは、酒蔵それぞれに造り方や目指す味の方向性があるため、どれくらいの期間が飲み頃で、どの温度で保管が必要かは各蔵によって差異があるということです。
さらにもっと大切なのは、酒質を劣化させる要因を知り、それらが味や香り見た目にどの程度影響が及ぶかを、自分の中で見極める感覚を身に着けることです。
とても一朝一夕ではつかめない感覚ですが、少しずつお酒の種類や季節の変化を経験していく中で、「この味はどんな変化するのだろう」と興味を持って観察することで、お酒の管理や保管の仕方のアイデアが出てくると思います。

このブログが、これからもっと自由に日本酒を楽しむために、日本酒の保管方法を自分なりに考えてみるきっかけになれば嬉しいです。